対称モデルの危険性
@はじめに
円形モデル、四角モデル、等、
対称な応答を期待できるモデルにおいては解析時間や精度の観点から軸対称や、面対称のモデルで解析が行われることがある。節点サイズが大きくなれば解析時間は2乗、3乗で長くなり、同じ規模であれば4倍高精度に解析できるからである。
 ただし、良いことだけで無いことは世の常で、落とし穴になることも多々あるし、対称モデルをフルモデルで解析する特有の注意事項もある。

A対称モデル
図1 2軸対称モデル 図2 一軸対称モデル 図3 1/4モデル
 対称モデルの例を図1、図2に示す。図1はX,Y方向に対称であり、中心点に対しても回転対称である。
 一方、図2は一軸に対してのみ対称であり、他方向、及び回転に対しては対称でない。
 
B対称条件
まず、面対称について考える。
 面対称条件とは、軸や面を中心として、対称、即ち、鏡面に写ったような振る舞いをすることを考えれば良い。
 まず、面を構成する要素、例えば、節点、面を考える。
対称面に沿った動きは鏡の中でも同じ動きをするので対称条件を崩すことはなく、面内方向を固定してはいけない。固定すると面内を動けなくなる。
 他方、面と垂直方向の動きは面を歪め、対称条件が崩れる。従って、面が歪まないように面と垂直な方向を移動しないよう固定条件とする。
これがソリッド要素の対称固定条件となる。

 3次元要素にはこの他にもShell要素があり、Shell要素は節点情報を元に面を構成するので、節点は位置情報のほかに、節点の向きを示す情報、即ち、回転情報も持っている。
 従って、要素の対称条件には前記位置情報の拘束の外、回転情報の拘束も含まれる。
回転情報の拘束も考え方は同じで、節点が鏡の中で同じ方向へ回転すればフリー、異なる方向へ回転すれば拘束となる。節点をボールと考え、半分にして鏡に貼ってみれば理解もし易いだろう。
一般には移動を拘束した軸方向の回転は自由になる。X軸の移動を固すれば、X軸回転はフリーとなる。
図4 フルモデル結果 図5 1/4モデル結果 図6 1/4モデルで表現できないモード

 
C結果を読み解く
 この様に、対称条件を設定し、解析した結果を図4〜6に示す。
解析モデルは円板を面方向へ振動させた場合の固有値を解析したものである。
 図4と、5は同じモードを表現しているが、図6の変形モードは1/4モデルでは表現できていない
これは設定した条件が面対称であるので面対称で発生しない図6のモードは見つからないのである。
 このような解析は強度解析で弱い変形モードを見つけるためにしばしば行われるので変形モードの抜けの無い様にモデルの構成に気をつけなければならない。

Dフルモデルの注意点
 ではフルモデルで解析すればよいのかと言うと、フルモデルならではの注意事項がある。
 対称モデルの図1のモデルでは対称であるからといって、中心点を固定しないと解析途中でモデルが解析から飛び出してしまう現象がある。
これは、本来なら、移動させる力は打ち消し合って発生しないはずなのであるが、細かな数値誤差が積み重なって力を発生させてしまうのである。
 例えば、座標の位置情報は有限の桁数で打ち切られており、これが円周方向各点で定義される。従って、真に対称であれば同じ数字が設定されなければならないが、桁の限りがある為に末尾1桁の対称性が保証されなくなる。
 この様に力の打ち消しが完全対称とはならないので、中心点が固定されていない場合はモデルがどこかに移動してしまうのである。
    (力自身は本当に小さいのであるが、剛性が0であるので移動距離が無限になる)

回転対称条件とは周期境界条件とも呼ばれ、一定角度毎に同じ現象が発生するモデルで、図6の変形モデルが該当します。対称条件の設定についてはWeb情報等を参照してください。